第1章 転校生と教師と猫かぶりのわたし

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「どうしたんだよ? すごい汗なんだけど」 「こ、これは暑いからで!」  なんて言ってみても動揺しているのは、きっとバレているはず。フラれたのはわたし。朔夜くんはきっと余裕いっぱいの顔で、わたしを見下ろしているんだろう。 「やっぱりいい」 「え?」 「送ってもらわなくていい。ひとりで帰る」  一刻も早く、朔夜くんの前から消えたかった。  まだ好きだから。わたしの気持ちに気づいた朔夜くんにまた「重い」と言われたら、今度こそ立ち直れない。  だったらもう近づかない。これ以上、嫌われるのは怖い。  わたしは朔夜くんの静止を振りきろうと走り出す。だけど……。 「天音!」  名前を呼ばれ、思わず立ち止まってしまった。 「ずるいよ、鳴海くん」 「なにが?」 「こんなときに名前で呼ぶなんて、ずるい。学校では『橘』だったじゃない」 「前もそうだっただろう。名前で呼ぶのは学校以外だけだったよ」 「そうだけど。だからこそだよ。わたしたち、もう別れたんだし、名前で呼ぶ理由はないでしょう」 「そっか、わかった」
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