第5章 涙に暮れて

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 あのときの朔夜くんを思い出すと、こうして一緒にいても不安でたまらない。また突き放されたらどうしようって。そうなったら自分がどうなってしまうのか想像すらできなくて、どうしようもなく怖いの。  本当は朔夜くんとやり直せたらと思うけれど……。  それと同時にそんな恐怖が背中合わせにあるから、こうして自分に素直になれても、複雑な気持ちのままでいる。 「赤羽さんには明日学校で会えるんだから、話を聞いてやれよ」 「……うん、そうだね」  とは言ったものの、わたしの不安はぬぐえない。  朔夜くんのお母さんがスマホを返しにきてくれたときも、たぶんわたしはかなりぎこちない笑顔だったと思う。
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