第6章 曖昧なままで

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 翌日、赤羽さんは学校に来なかった。  1時間目の休み時間。職員室での、このヨウくんの苦々しい顔からして、無断欠席らしい。 「彼女のことは僕にまかせて。橘さんは教室に戻りなさい」 「ごまかさないでよ。赤羽さんと連絡は取れたの?」 「橘さん、いい加減にしなさい」 「心配なの。昨日、電話で直接話したんでしょう? どんな様子だった?」  最初は「うーん」と、うなっていたヨウくんだったけど、しつこく食い下がるわたしに根負けしたらしい。まわりを気にしながら声のトーンを落とし、赤羽さんのことを話してくれた。 「昨日はお母さんと話しただけなんだよ。部屋から出ないらしい。でも食事はちゃんと食べてるっていうことだったんだ」 「じゃあ、今も部屋にこもってるの?」 「それが……」  ヨウくんが深いため息をつく。 「どうしたの?」 「今朝、お母さんが仕事から帰ったとき、部屋にいなくて制服もなかったから、てっきり学校に行ったんだと思ってたそうだ」 「行方不明ってこと!?」 「ばか、声が大きい」  言われて、慌てて口もとを手で隠す。  それにしてもどこに行ってしまったんだろう。七瀬さんと一緒ならいいんだけど。それとも今、ひとりぼっちでいるのかな。
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