第1章 転校生と教師と猫かぶりのわたし

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 それから5分ほど歩いて自宅に着くと、朔夜くんが感慨深げに言った。 「ぜんぜん変わってないなあ」  朔夜くんがこの街から引っ越してから約2年。そりゃあ、たった2年でそう変わらないだろうと思うんだけど、朔夜くんはしばらくそこを動かなかった。 「ちょっと寄ってっていい?」  突然、朔夜くんがそんなことを言う。びっくりしたけど、だめとも言えず、「別にいいよ」と返した。 「たぶん、お父さんたち、お店にいると思うから」  お店というのは、両親が営んでいる小さな食堂のこと。『たちばな食堂』といって、『あかね通り商店街』の通り沿いにあり、わたしの自宅はお店の裏にある。  以前、朔夜くんはうちのお店で何度も食事をしていて、両親も朔夜くんのことをよく知っている。  朔夜くんとの交際は、学校の友達には内緒だったけれど、お互いの家族には公認だった。
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