第6章 曖昧なままで

27/30
1088人が本棚に入れています
本棚に追加
/257ページ
 高校の入学式直前の春休み。朔夜くんにフラれたわたしが向かった先は、ヨウくんのマンションだった。  家には帰れないと思った。築はわたしの異変に敏感で、すぐにそわそわと落ち着かなくなる。  できるだけ心配をかけたくないし、泣き顔は絶対に見せたくない。  そんなとき思い浮かんだのがヨウくんだった。  ヨウくんは快く部屋に上げてくれて、それから数時間もわたしのことを放っておいてくれた。おかげでその間、わたしは思いきり泣くことができた。  あのとき、理由すら聞いてこなかった。ティッシュとゴミ箱を横に置いてくれて、ただ黙ってそばにいてくれた。  そしてわたしが泣き止んだ後、「おなか空いただろう?」と出されたのが、ベチャベチャのチャーハン。おまけに醤油を入れすぎて、めちゃめちゃしょっぱくて、すごくまずかった。  でも朔夜くんと別れたときのことを愚痴りながら、そのまずいチャーハンを完食しちゃったんだよね。
/257ページ

最初のコメントを投稿しよう!