第6章 曖昧なままで

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 あの頃、ヨウくんには大学時代からつき合っている彼女がいた。普段家ではその彼女の手料理を食べていて、あまり自炊をしていなかったそうだ。  今はだいぶ上達したらしいけど、仕事が忙しくて、なかなか自分で料理をしようとはならないらしい。  らしいというのは、わたしが直接聞いた話ではなくて、お母さんが聞いた話だからだ。  わたしが高校生になってからは、あまり親密にならないようにしている。あれ以来、マンションの部屋には上がっていない。  それはお互いに自分の立場を理解していて、暗黙の了解だった。  教師と生徒だから。  たとえ恋愛感情はなくても、必要以上に仲よくしてはいけない。誤解される行動もしてはいけないと、自分なりにちゃんと気をつけていた。 「でもまあ、鳴海くんとうまくいってるみたいだし、よかったな」 「いや、どうなんだろう。今のところ、友達って感じだし。前みたいな関係に戻れるのか、自分でもよくわかんない」 「それにしては、随分といい雰囲気だったけど。昨日の別れ際も、お互いに名残惜しそうだったしな」 「やだ! 見てたの!?」 「見てるもなにも、俺と赤羽さんのいる目の前で堂々とイチャイチャするから、見るつもりはなくても見えてたし、聞こえてたよ」 「イチャイチャなんてしてないでしょう。あんなの、普通の会話だし」
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