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「とぼけちゃって。あたし、見たんだよね。昨日、学校近くの商店街で……」
そして馬渕さんの次のセリフに、わたしの背筋は凍りついた。
「橘さんが貴島先生と抱き合ってるところ。あれ、どういう意味? やっぱりつき合ってるのかな? ねえ、鳴海くんと貴島先生と、どっちが本命なの?」
馬渕さんがそう言った瞬間、教室中から女子の金切り声や男子の野次が聞こえてきた。
大勢が、わたしを犯罪者のような目で見ている。
あの場所に馬渕さんもいたなんて……。
でも違う! 抱き合ってなんかいない!
そう言いたいのに、声が出ない。
早く否定しなきゃと思うのに、声をどうやって出すのかがわからなくなって、わたしは立ち尽くしていた。
だって朔夜くんが瞬きを忘れたように、じっとわたしを見ていたから。
あれはわたしを軽蔑している目だ。きっと、そうに違いない。
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