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それでも歯を食いしばり、怒りをなんとかやり過ごそうとする。けれど、わたしの大切な人たちを次々に見下されて、抑えがきかないところまできていた。
「……らないくせに」
「はっ? 今、なんて言ったの?」
うつむくわたしに、馬渕さんが威圧的にたずねてくる。それが無性に腹立たしい。
「いい加減にして!!」
気づけば、わたしは教室どころか、廊下にまで響く声で叫んでいた。
「なんにも知らないくせに。赤羽さんのことも、貴島先生のことも。わたしのことだって、なにも知らないくせに……。勝手に想像したことを、まるで事実みたいに言わないでよ!」
クラスのみんなは呆気にとられているみたいだった。教室がシーンと静まり返る。
けれどそれも一瞬のこと。次の瞬間、あちこちから笑いが起こり、わたしをばかにするような言葉が次々に飛んできた。
やってしまったと思った。
でもどうしても自分を抑えられなかった。
「あなたたち、うるさいわよ! 掃除は終わったの?」
ふいに、開いていた教室の出入口から、学年主任の大徳寺先生が顔をのぞかせた。
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