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大徳寺先生は50代のベテラン教師。たくましい名前と迫力のある声だけど、れっきとした女性だ。
「大徳寺先生、聞いてください。うちの学級委員長と貴島先生が昨日の夜に密会していたんです」
馬渕さんがニヤリとした。
大徳寺先生が目だけを動かして、わたしを見る。
「馬渕さん、本当なの?」
「はい、橘さんも認めてました。個人的に会っていたのは事実です」
そして馬渕さんが大徳寺先生に駆け寄り、なにやら事細かに説明をしている。すると大徳寺先生は、「橘さん、一緒にいらっしゃい」とだけ言って、教室を出ていった。
もう逃げることはできない。
どちらにしても話すべきことはちゃんと言わないと、ヨウくんの立場が危うくなってしまう。
朔夜くんの顔を見ることはできなかった。
誤解だと後で伝えればいいのだろうけれど、言ったところでなにが変わるんだろうという気もした。
朔夜くんがわたしを好きだと限らない。わたしがヨウくんとどういう関係かなんて、どうでもいいのかもしれない。
追いつめられたわたしは、そんなふうにしか考えられなくなっていた。
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