1096人が本棚に入れています
本棚に追加
意外だった。夜の世界なのに、そういうところは厳しいんだ。
じゃあ、ピアスホールもそうなのかな。仕事じゃないときはピアスをしているかも。
「七瀬」
また、クールなバーテンダーさんの声がした。「わかりました」と七瀬さんは返事をすると、もう一度赤羽さんのほうを向いた。
「オーダーが入ったから、また後で。ごめんね、加世ちゃん」
「ううん、ぜんぜん。わたしのことは気にしないで仕事に戻って」
その後は七瀬さんの仕事のじゃまにならないよう、カウンターから見ているだけにした。
その間、赤羽さんから彼とのことを根掘り葉掘り聞き出す。
「百貨店で開催されてた現代アートの個展で知り合ったの」
「個展って写真とか絵画の?」
そういえば赤羽さんは美術部だった。もともと芸術に興味があるのだろう。
「うん。七瀬さんの絵にひと目ぼれしちゃって。七瀬さんはファンタジーの世界を描く画家なの」
プロの画家らしい。
けれどそれだけでは食べていけず、駅前のコンビニとこの店でアルバイトをしているそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!