第3章 彼女の事情

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「高校生のくせに、こんなところでなにやってんだよ!?」  迫力満点。すごい剣幕だった。 「こ、これは、その……」  身体が硬直して口もうまくまわらない。 「一緒にいるのは……赤羽さん!? なんだよ、その格好は。赤羽さんまでどうしちゃったんだよ?」 「貴島先生、誘ったのはわたしなんです。橘さんにはショットバーに行くことは知らせずにつき合わせてしまって……」  赤羽さんがわたしのことをかばってくれた。でもヨウくんはそんなことは関係ないらしく、わたしたちふたりに向かって言った。 「事情は後でゆっくり聞くからな。とにかく今日は帰るぞ! 赤羽さんも! 家まで送るから」  珍しくヨウくんが怒っている。ううん、こんなふうに怒鳴るヨウくんを見るのは初めてだ。  でも、どうしてわたしがここにいるのがわかったんだろう。あの登場の仕方は偶然というより、なにか確信めいたものがあって入ってきたという感じだった。 「まさか密かにGPSを忍ばせられてる?」 「はっ?」 「いや、なんでもありません」  思わず、口に出してしまった。  ヨウくんの目が恐ろしいほどにつり上がっている。その形相のまま、ヨウくんはデニムのポケットから財布を取り出した。
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