第3章 彼女の事情

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「櫻井さんは、わたしのこと知ってたんですか?」  さっきの会話によると、櫻井さんがヨウくんに連絡を入れていたようだ。  だけど、わたしはこのお店に来るのは初めてだし、櫻井さんとはたぶん初対面のはず。 「それともどこかでお会いしてましたっけ?」 「会ってるよ、何度か」 「そうなんですか!? どこでだろう? すみません、どうしてもわからなくて」 「何度か君のご両親のお店に行ったことがあるんだよ。夜は自分の店があるから、行くときはランチの時間帯がほとんどだけど」 「そうだったんですね」  やばい、ぜんぜん覚えていない。  たしかにランチの時間帯に手伝うことはあるし、お客様の顔はなるべく覚えようと努力はしているんだけど、なかなか一度で覚えられなくて、商店街で声をかけられて戸惑うことも多い。  でも若いお客様はそんなに多くないし、櫻井さんほどの格好いいい人なら印象に残っているはずなんだけど。
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