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「あっ、俺、普段はオーラ消してるから。たぶん、この顔で思い出そうとしても、一生思い出せないと思うよ」
櫻井さんは自分のことを指さして言った。
わたしはランチを食べにくる若いお客様のことを必死に思い出そうとがんばった。
たまに若い男性や大学生っぽい人は来ることは来るんだけど……。そして、ひとりの人物が思い浮かんだ。
ううん、でもそんなわけないよね。だってあの人は……。でも一応聞いてみた。
「あの、もしかして、ぼさぼさ頭のメガネの人ですか? 上下黒のスエットとか、『完全無欠』とか『非常事態』とか、わけわかんないロゴの入ったTシャツとか着てくる人なら覚えてます」
「よくわかったね。そう、たぶんそれで合ってる」
「う、嘘ですよね!? やだ、わたし、てっきりアブナイ人だとばっかり思ってました。だからなるべく目を合わせないようにしてて、顔をよく見たことがなかったんですよ!」
「だろうね、正常な反応だと思うよ」
相変わらず、櫻井さんはクールに答える。
「なんだよ、櫻井。その、『完全無欠』とか『非常事態』って?」
ヨウくんが訝しげにたずねた。
「親戚のおじさんが県北の温泉街で土産物屋をやってるんだけど。その店で外国人向けにオリジナルTシャツを作っていて、そのサンプル。ほら、外国人って漢字が好きじゃん、四文字熟語とか」
「この辺りでそんなTシャツ着てたら、不審者と間違われるぞ」
「ああ、何度か職務質問されたことあるよ」
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