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「櫻井のことだから、それを楽しんでるんだろう? おまえ、趣味悪いぞ」
「そんなわけないだろう。おかげで、駅前の交番のやつが店の常連になって困ってんだよ」
「嘘だろ、おい……」
ヨウくんが急に声のトーンを落とす。
「大丈夫。今日は来てない」
「よかった」
「休みの日にたまに顔を出すぐらいかな。常連は何人もいるわけじゃないから、店で遭遇する確率は低いと思う。ただこの辺は頻繁にパトロールはあるから」
櫻井さんはまじめな顔つきで話した。そして、わたしと赤羽さんのほうに顔を向けると、少しきつい口調で言った。
「そういうことだから。未成年に酒を提供したってなると、店としてもまずいんだよ」
わたしと赤羽さんはしゅんとなる。
「ふたりともごめんね。でも櫻井さんのしたことは正しいから。二十歳になったら、また来てね」
七瀬さんも櫻井さんがヨウくんに連絡をしたのは承知しているようだった。
赤羽さんはますます落ち込んでしまう。七瀬さんに迷惑をかけたことを申し訳ないと思っているのだろう。下を向いたまま、「ごめんなさい」と謝っていた。
いつもは未成年だと疑われる人には身分証の提示をさせているらしい。
今日は、わたしのことをたまたま知っていたから、ヨウくんに直接連絡をしたそうだ。ヨウくんの勤務する高校の生徒だということも知っていたらしい。
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