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それからすぐに店を出た。
歩いているうちに、ヨウくんはだんだんと冷静になっていって、「女って怖いな」と小さくつぶやいた。
たぶん赤羽さんのことだ。
「ねえ、びっくりだよね。わたしも待ち合わせ場所で赤羽さんを見たとき、最初誰だかわからなかったもん」
「貴島先生、今日のことも含めて、みんなには内緒にしておいてくださいね」
赤羽さんが「お願いします」と手を合わせて頼み込むと、ヨウくんは「あたり前だ」と即答した。
ヨウくんでよかった。ほかの先生だったら学校に報告されてしまうところだった。
「そういえば、あのショットバーにはよく行くの?」
ヨウくんがお酒を飲んでいるところを見たことがない。うちのお店にもビールを置いているけれど、頼んでいるところを見たことがない。
「たまにな」
「あのバーテンダーさん、櫻井さんと仲がいいんだね」
「まあな。あいつ、クールだけど、情に厚いっていうか、けっこう面倒見がよくて、いいやつなんだよ」
なんでも、ヨウくんとは中学時代の同級生だったそうだ。
歩きながらヨウくんと櫻井さんの関係をたずねたら、ヨウくんはそう教えてくれた。
面倒見がいいのか。とてもそうは見えないけど。それに明るいヨウくんと物静かな櫻井さんとじゃ、対照的なふたりに思える。
でも櫻井さんがうちのお店に通ってくれていたのは、ヨウくんがおいしいと勧めたからだそうで、仲がいいのは本当のようだった。
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