第3章 彼女の事情

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「ところで、ふたりはなんであの店にいたんだ?」 「え……」  やっぱりそうなるよね。でも事情を話したら納得してくれるのかな。 「言えない事情なのか?」  ヨウくんはわたしたちが渋っているのを見て、怪しんでいる。 「橘さん、いいの。わたしから話すよ」  仕方なく、赤羽さんが七瀬さんのことを話した。片想い中で、あのショットバーに行くしか会う方法が思いつかなかったことも説明する。  だけどやっぱりヨウくんは納得してくれなかった。 「だからって、だめなものはだめだ。あの店には行くなよ。あと夜遅くに出歩くのも禁止だ」  結局、かなりこってりとしぼられた。いつもの穏和なヨウくんではなかった。教師だからというのもあるけれど、大人としてわたしたちを叱ってくれている。  だからなのか、ヨウくんの言葉を素直に受け入れられた。赤羽さんも観念したのか、渋々だけど「わかりました」と答えていた。
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