第3章 彼女の事情

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「さてと、次は天音の家だな」  ヨウくんはまず赤羽さんを家に送り届けた。赤羽さんの家は小さなアパートで、ショットバーからも徒歩で七、八分といったところ。  わたしの家は赤羽さんの家からだとちょっと遠いけれど、歩いて帰れる距離だ。おかげで久しぶりにヨウくんとふたりでゆっくり会話ができた。 「教師っていうのは大変な職業だね。学校じゃないところでも生徒の面倒を見ないといけないなんて」 「そう思ってくれるなら、二度と行くなよ」 「しつこいなあ、もう行かないよ。櫻井さん、怖いし。まあ、悪いのはわたしたちだけど」 「櫻井は昔から我が道を行くって感じだからな。誰かに媚びることは一切しないし、愛想笑いのひとつもできないやつだから」 「愛想笑いぐらいはしようよ。客商売なんだから」 「ははっ、そうだな。あんなんで、よく店長が務まるよな」  あれで店長なのか。どちらかといえば、七瀬さんのほうが貫録あって、店長っぽいんだけど。
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