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放課後の第二音楽室。
期末試験一週間前なので、部活に来ている人はいない。
「だから先輩、告白の練習に付き合ってください!」
「別に良いけどさ~……今の時期じゃなきゃ駄目なの?」
「今の時期じゃなきゃ駄目です!」
なら、練習してみなよ、という女生徒に、後輩の男子生徒は声を張り上げる。
「先輩! 好きです!」
「先輩! 愛してます!」
「先輩! 結婚したいです!」
「先輩! 一生一緒にいたいです!」
「先輩! 僕は今、最高に幸せです!」
「いや、その台詞はおかしい」
「先輩! 好きです! 付き合ってください!」
「……さっきからそれ、まさか、私のことじゃないよな?」
「いや、先輩のことですけど?」
「はぁっ!?」
女生徒は顔を赤くして口をぱくぱくと開けたり閉じたりしていたが、なかなか声が出なかった。
ひとしきり愛の言葉を先輩たる女生徒にぶつけた男子生徒はやり遂げたような顔をして、
「じゃあ、先輩。明日の放課後、告白しますのでよろしくお願いします!」
敬礼を残して去っていった。
女生徒が声を掛ける間すらなかった。
「え? 何あれ? あいつ、馬鹿なの? フラれた時のこととか全然考えてないだろ」
まあ、振る気も無いが、と顔を赤くして呟くあたり、この女生徒も満更ではないようだ。
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