天気雨《fake smile》

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天気雨《fake smile》

町は夜を迎えた。薄い雲が空を覆い、淡い月明かりが町を深海に落としていく。 横から吹くゆったりとした風で、立てつけの悪い扉は小刻みに震えていた。 辺り一面短い草に囲まれた小さなその町は、低い柵で囲まれていて、その中だけ土が掘り起こされ、茶色い地面が出来上がっていた。 そんな町に、にらみつけるような表情でヴーヴー唸りながら歩いている人がいた。 「うぅぅ……眠い。フカフカのベッドで寝たい……。生まれて初めて立ったまま寝そうになったしなあ……。もう誰もいなさそうだし……。どうしたものか……」 その人は両手を天に向けて大きくあくびをした。ふと、夜空を見上げ、優雅にのんびりとながれる雲を見る。一度息を吸った。 冷たい空気が胃ではなく肺に蓄えられる。空腹感は満たされなかった。 ふぅー、と息を吐き、彼はまた歩き出した。町を横一文字に斬る道は、中央で一度丸く引き伸ばされていた。その広い空間を、彼は静かに進む。 「──────────わっ」 その人は、土に埋まっていた岩につまずいて、体をつんのめらせて───派手に転んだ。完全に閉じていた彼の目が、痛みや驚きとともに開かれた。 顔を上げるとそこに、火をもたない一本の蝋燭(ろうそく)が立つ燭台(しょくだい)があった。 地面から突き出た細長い棒に、薄くて四角い板が水平にくっついている。その板の中央に、円柱の形に固められている白濁した蝋と細い綿糸が、まだ数時間は燈りそうな姿で、残っていた。 その人の目の高さほどにあった蝋燭は、底が抜けた立方体のガラスが外部からの影響を遮断していた。最近まで誰かが磨いていたかのように、その前に立つ者がガラスがあると視認できないほど透き通っていた。 「う?あー……蝋燭かあ……。食べられないよな……もう嫌、あー嫌になっちゃう。もう……。お家借りますよーいいですよねー?叩かないでくださいよー?」 その人は小屋の扉を開けようとしたが、その扉は開かなかった。 「あれ?鍵かかってんのかー?」 その人は扉をにらみつけながら立っていたが、 「あっ────」 次の瞬間、その場に足から崩れ落ちた。
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