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ー俺の計画ー
20歳になって初めての夜桜見物。
大学のクラスメイトたちとの宴会が、「宴もたけなわではございますが」と、ようやく一本締めでお開きになったとき、幼馴染みの弘子に目を向けた。
「弘子、帰るんだろ?送ってくわ」
「え?優馬、二次会は?」
いつもなら二次会どころか最後までつき合うから、俺の言葉に弘子も驚いている。
「幹事じゃないし、弘子がその格好で一人夜道を歩くかと思ったら、心配で酔えないし」
もちろん嘘だ。
今日のために準備をしてきた、ある計画を実行するためだ。
「その格好って・・・着物だけど、私がよく着物着てるの知ってるでしょ?それに、美弥子たちと帰るから、一人じゃないし」
弘子の家は伝統的な日本文化を重んじる家風で、幼い頃からよく着物を着ていた。
今日の弘子は、薄緑色の着物に銀色の帯を締めてきている。
少しお酒を飲んだのか、白い肌がうっすらとピンクに染まっていて、余計に着物姿から色気がでている。
まるで青いシートの上に一輪の花のように座る弘子を、宴会の参加者だけでなく側を通っていく人たちもチラ見していくことを本人は気づいていないから困る。
「いいから、早く草履履けって」
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