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心の中で悪態をつきながらも、いつものように軽く受け答えをし、その場にいた幼馴染に「あとは頼む」と目配せをした。
普段、大人数でつるむことも、イベント事にも参加しない、幼馴染が、今日は俺のために協力してくれたのだ。
まあ、アイツにも別の計画があってのことだから、お互い様、なのだが。
こうして 、まだ騒いでいる皆の声を背にして俺は弘子と歩きだした。
もちろん、手は繋いだままだ。
「ちょっと暗いけど、向こうからも出れるだろ」
俺は、公園の正面出口とは反対方向に延びる、細い遊歩道を指差した。
この公園は、俺達の家の最寄り駅から歩いて5分ほどのところにある。
俺や弘子も子どものころは何度も遊びに来たし、桜以外にもたくさんの花や木が植えられているから、今でも学校帰りに立ち寄ることもある。
今は夜桜見物のための行灯がたくさん飾られているから真っ暗ではないが、それでも舗装されていない、所々、木の根で隆起した歩道や手すりのない階段を歩くには、心許ない薄暗さのところもある。
そこは、近道になることはわかっていても、女の子が1人で通ることはまずない道。
だからこそ。
少し不安そうな弘子に「大丈夫だよ」と微笑んでみせれば 弘子も微笑みかえしてくれた。
よし、と俺は気合いを入れた。
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