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 (寝た気がしない……)  目覚ましの音が容赦なく朝を告げる。  このところ毎晩そうだ。昨晩も、布団に入ったのは早かったのに、実際にうとうと眠ったのは明け方位だったのではないか。  (無駄な芸を仕込まないで欲しい)  心から思う。  カーテンからさしこむ明るい陽射しが目に痛い。夜が明けた今、きっと奴は今頃、新しい「ネタ」を仕込もうとワクワクしているだろう。  できることなら直談判したい。  それにしてもお前は一体何者か。羊飼いよ。 **  最初は、ただの羊であり、個性といっても、せいぜい顔が黒いとか白いとか位だ。ところが、時間がたつにつれて、一頭一頭の個性が強烈になってゆく。    「メエエエ」  「ンメエエエエ……」    平和な牧場は明るい緑の草が続いている。空にはチーズのようなお月様がかかり、柔らかく温かな夜風がほとんど気づかないほどの静かさで、流れ続けているのだった。  そんな牧場に、無数の羊たちが待機している。     
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