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くるくるくると回転しながら飛び越え、着地した時に拍手が鳴り響いてみたり。
「何で今日あんなこと言ったんだろうなあ」
などと、忘れかけていたことを蒸し返しながら飛び越えていくやつもいる。
眠たそうな顔をした羊飼いは、芸を仕込んだ羊どもに柵を飛び越えさせる。だるそうに棒を右から左に振り続けるのだ。
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このところ、羊の主張が激しくなってきた。
日によっては、最初の一頭から凄いやつが来る。
羊のことなど考える間もなく、すとんと眠ることができれば良いのだけど。
疲れていないわけでは決してないのに、悩ましいことだ。
鳴り続ける目覚まし時計をバシと止めながら、わたしは起き上がった。
今夜も羊の芸当を見せつけられるのだろうか。
願わくは、羊飼いが疲れ切って、勤務時間に居眠りしてくれればと思う。
グースラ寝こける羊飼い。これ幸いと、羊は柵を飛ばずに草を食み続けるだろうけれど、そっちのほうが、よっぽど寝やすい。
気だるさを断ち切るように、ブラックコーヒーを飲みほした。
そして今日も、一日が始まる。
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