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羊は、数えるほどに眠たくなってナンボの存在ではないのか。こうも自己主張が強いと、いったい今が何匹目なのかということすら、どうでもよくなってくる。
羊のくせに、白黒に毛を染めたパンダ風のやつが「めええええ」と飛び越えてゆくのを、げんなりとして、わたしは見送る。
調子に乗りすぎているとしか思えない。
件の羊飼いは、淡々としている。眠そうな顔のまま、だらだらと棒を振り続けている。
無個性であるべき羊に、超個性的な芸を仕込みやがった張本人が、こいつ。
暇な昼間のうちに――いくら他にやることがないからといって、これはあんまりだ――一頭一頭、入念に教え込んだり、仕掛けを仕込んだりしたのだろう。
あっ。
今飛んだやつ、飛んだ瞬間に頭の上の毛の中から、鳩が飛び出して、夜空にはばたいていったじゃないか。
どんなマジックだ。
羊飼いは何も考えていない、ぼうっとした顔をしているが、絶対にこいつの腹は真っ黒だ。
こいつがどういうわけで、わたしの邪魔をしているのか分からない。
一方、羊のほうは、ますます強烈になっている。
「犯人はおまえだ」と叫びながら飛び越えるやつ――なんのサスペンスか、気になってしようがないじゃないか。
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