おかしな名前の男4

3/11
49人が本棚に入れています
本棚に追加
/138ページ
 けろりとした表情で海老石は言った。それがまるで何でもないことであるかのように。 「そんなに驚いた顔をしないでくださいよ。江上先生が犯人であると断定した以上、その手法や凶器は当然見当がついています」  あくまで陽介が犯人であることを前提に探偵は話すつもりのようだ。 「まず、僕が現場を見て一番最初に引っかかったのは、これです」 そう言いながら海老石が取り出したのは、先ほど見せられた三枚の写真のうちの一枚目だ。 「現場には色々な物が散乱していました。仕事仲間の芸人さんに聞いたところによると、上原さんは少々ずぼらな一面があったようで、いつ家を訪ねて行ってもこのような状態だったようです」 「なるほど。それはつまり海老石さんや警察の方々の見解を裏付ける証拠になりますね。被害者の部屋に物が散乱している状態は恒常的であり、殺人者ともみ合った際のものではない」 そもそも背後からの一撃で被害者は即死、という見解が有力なのだから、犯人ともみ合った云々は最初からなかっただろう。海老石の意図が陽介には分からなかった。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!