0人が本棚に入れています
本棚に追加
そう書かれた看板が目の前にある。私はコーヒーに目がない。いろんなところに行っては、喫茶店に入り、コーヒーを注文している。そんな私に、この文句はぐさりと刺さる。そんなコーヒーがあるのであれば、ぜひ入ってみる他ない。
最近、仕事が忙しかった。喫茶店めぐりができていない私は、大抵、自動販売機で買った缶コーヒーを同僚と飲む。当然だが、缶コーヒーは鉄の味がして、まずくて飲めたものではない。私も、気持ち悪くなりながらコーヒーを同僚と共に何食わぬ顔で飲んでいた。
私は、店に入った。店内は落ち着いていて、白を基調とした空間であった。席に座ると、部屋の隅に胡蝶蘭が置いてあるのが目に入る。どうやら、最近開店したのだろう。祝いのプレートもまだしっかり刺さっている。
私は、メニューを見た。ブレンド……アメリカン……キリマンジャロ……。大体どこの喫茶店にもありそうなメニューがしっかりと並ぶ。どれが、自慢のコーヒーなのだろう……。私が探している間に、いつのまにか店主がおしぼりとお水を持ってきた。私は、店主に尋ねる。
「あの、表の看板にあった……。自慢のコーヒー?あれって……」
そう言うと、店主は
「ああ、ブレンドコーヒーのことですね」
そう言う。続けて
「うちのコーヒーは、えぐみが少なくていい豆を使っているんです」
と言う。私はそれを聞くと、
「じゃあ、それを」
と言って、ブレンドコーヒーを注文した。店主は、かしこまりましたと言って厨房に戻る。厨房と言っても、席から丸見えでまるで一般家庭の対面式キッチンという感じであった。私は先ほどの店主の言葉を反芻する。えぐみの少ないコーヒー……。実はなかなかなくて大抵、えぐみが強い店が多い。特に、私の地域は朝にコーヒーを頼むと他にもいろいろついてくるような土地柄。コーヒーはある程度の色と味が付いていればいいという店もかなり多い。大抵、そういう店のコーヒーはえぐいのが定石。それが少ないとは素晴らしい。
最初のコメントを投稿しよう!