4話「瞳に映る世界」

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4話「瞳に映る世界」

あらすじ ある目的の為に街にやって来たベティは、廃屋の屋上で、月灯りに照らされた真っ白な女性、エレンと出会った。次第に心を開いていく二人、だが、まだ秘密があるようで……。 4話「瞳に映る世界」作:花月小鞠  長い道のりだった。街の入り口に立つベティは、ふっと息を吐く。辿り着けさえすればいいと時間を気にしていなかったため、空には闇が広がっていた。静かな街。街灯はほとんどなく、民家から漏れる光もほとんど見られない。ベティは顔をしかめながら、街へ足を踏み入れた。大きなリュックを背負い、動きやすいラフな格好をしている。初めて街に来たとは思えないくらい、堂々と道の真ん中を突き進んでいく。元々堂々とした性格なのか、それとも自棄になっているだけなのか。自分でもわからないくらい、ベティはこの旅に全てを賭けていた。どうせもう、失うものなんて何もない。  セピア色の長い髪が風になびく。頭には青いバンダナを巻いているため、さほど乱れずに済んでいる。ふと足を止め、ベティは辺りを見渡した。次の目的地を探るためだ。街の中に人の姿はあった。建物の前に座り込む者や、ベティに一切目を向けず徘徊する者。誰かに声を掛けるにしても、慎重になった方がいいだろう。うーんと唸り、ベティは左右に目を向ける。焦ってはいけない。やっとここまで来たんだ。この先にあるはずなんだ。――あたしの望む世界が。  視界に白い影が映った。動きを止めて、ベティはその影の方向に目を向ける。人の使っている気配のない廃墟だ。元は何かの店だったのだろう、付近の民家と比べて少し大きい建物だ。窓から微かに見えた白い影。一体何なのだろう。幽霊の類は信じていないが、一瞬頭によぎったことにベティは苦笑する。ベティは息を吸い込み、廃墟へ向かった。
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