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 今も忘れない。ウサギたちの歌。  はじめて野を駆けたあの日。僕はウサギだった。檻から逃げ、自由を手に入れた脱兎だった。湧き出る血潮に体を預け、天高く跳ね上がる足。力ずよく大地を蹴るも、その骨はカラカラで弱弱しく、噛みつかれればキィ! と甲高い声をあげて地に背をつけるだろう。  ウサギが群れるかは知らないが、僕ら脱兎はいつでも群れていた。滅びるその日まで、誰かに噛みつかれるその日まで、ただの一度も群れを外れることはなかった。夜に歌を歌い、宴をする。 そんな、遠い日の忘れられないいつかの夏。
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