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古びた二十畳ほどのリビング。ログハウス調の洒落っ気のある内装だ。奥にはまだ部屋があるようだが暗くてよく見えない。真っ昼間だというのに、こうも薄暗いのは建物の周囲にひしめくブナ林の為か。
「誰も住んでねぇってことはなさそうだがな。家主を追っ払っちまえばいい隠れ家になりそうだぜ」
にんまりと片口角を上げて立ち上がり、……今一度、グラスは地に落ちた。今度こそ無事では済まなかったグラスの悲鳴と嫌な音を立て鳴る奥歯。
「おばあちゃんが眠っているの。お静かにお願いいたしますわ」
鈴を転がしたような声。湾曲した背筋を、重力に反した動作で上る鉄の口。その正体を彼は、……――
――…… 葡萄酒。
――…… 古びた森の木の家。
――…… そうか、ここは。
男はあっさりと両手を頭の高さに揃えた。
「あら? ゾクゾクするほどギラつく牙は飾りなの?」
くすくすと喉で嘲るは、年端もいかない少女のようである。そんな愛らしい声が「たかがチャカ一丁で」と。
銀狼は大人しく両膝も地につける。そうして震える声でやっと抵抗した。
・・・・続きは本誌で
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