4話「月明かりの音色」

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4話「月明かりの音色」

あらすじ 人間の少女ニーナは狼のグレイに拾われ、共に森で暮らしていた。だがある日、人間達に見つかり、グレイは撃たれて傷を負い、ニーナは人の世界へと連れて行かれてしまう……。 種族:獣(イヌ科)×少女 CP:♂×♀ 4話「月明かりの音色」作:花月小鞠  月の光が差し込む森の中で、小さな身体の少女が倒れている。時折吹く風が、その身にまとっているぼろぼろの布を揺らす。身体は酷く汚れていて、傷だらけ。浅い呼吸を繰り返しているが、その目は開かない。そんな少女の元に、何者かが近付いていく。巨大な身体に、真っ白な毛。鋭い目に、尖った牙。大きな狼が、ゆっくりと少女に視線を移す。気配を感じたのか、少女はわずかに目を開けた。やっとの思いで伸ばした小さな手は、狼の鼻先に触れた。  目を開けた少女は、ぼんやりと身体を起こす。鳥のさえずる声のする森の中で、大きく欠伸をした。気持ちの良い朝だ。 「起きたか、ニーナ」  低い声に、ニーナと呼ばれた少女は顔を上げる。そこには、大きな体の、真っ白な毛をした狼。鋭い目に向かって、ニーナは微笑んだ。 「おはよう、グレイ」  グレイは顔を横に向けて何かを指す。そこには、ウサギの死骸が置かれていた。一見眠っているだけのようにも見えるが、背中に大きな傷がある。グレイのつけた傷跡だろう。 「今日の飯だ」 「わぁ、ウサギだ」  嬉しそうに笑うニーナに、グレイは呆れたように息を吐く。ニーナはウサギに駆け寄り、腰に固定させているベルトからナイフを取り出した。 「美味しく食べてやるからな」  グレイが立ち上がり、ニーナに声を掛ける。 「こっちのシカも頼む」 「グレイのごはん? わかった。待ってな」  ニーナはそう言って、ウサギにナイフを入れた。  ニーナがグレイに拾われてから、十年の月日が流れた。小さく、ぼろぼろだった少女は、グレイに育てられてきた。相変わらずどこかで拾ってきたような布をまとっているが、川で洗い、清潔にしている。腰につけているベルトやナイフは、森にやってきた人間の落し物だ。  長い黄檗色の髪に、大きな紺碧色の瞳。ぼろぼろになって倒れていた少女は、健やかに成長していた。 「よし、できた」  にっこり笑うニーナに、グレイは鼻を鳴らした。食べやすいサイズに切られ焼かれた肉を囲み、ふたりで食らいつく。これがふたりの朝の光景だ。 ・・・・続きは本誌で
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