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そこで目が覚めた。
嫌な夢……。
机に突っ伏していた。英語の宿題をやっている最中に寝てしまったらしい。机の上には英文のプリントが乱雑に置かれており、その一部が涙で濡れている。
友花の笑顔、そして、遺体となって発見された時の姿が思い出される。
溜息……。ゆっくりと涙を拭うと、イスから立ち上がった。
窓に向かう。カーテンを開け、外を見る。夜の二十二時四十五分。真っ暗だった。
この家は横浜市にあるが、高台に建てられていて、晴れた昼間なら富士山が見える。
その景色はとても気持ちの良いものだった。なので、たとえ暗闇だとしても、そちらの方向を見れば気持ちも落ち着くと思った。いつもならそうだ。
でも、今日は違った……。
富士山が見えるはずの場所には闇。しかも、その闇が、何故か禍々しく揺れているような気がしたのだ。
何だろう?
不穏に感じる絢葉。富士山があると思われる所の少し上辺りに、怪しげな歪みが見えた気がした。
おかしい。何かおかしい。
絢葉の胸に、得も言われぬ恐怖感が生まれた。
何かが、起こる。とても悪いことが? え? そんな……。
自分の胸の奥に渦巻く黒い靄を、必死に振り払う。
だが、一度浮かんだ忌まわしい予感は、なかなか消えてくれない。
何が起こるというんだろう? どこで? どんなことが?
暗い気持ちを持て余しながら、闇を見続ける。
……誰も、何も応えてはくれなかった。
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