さよならのゆきさき

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「お、そのテンプレ導入はホラー? いいねぇ。深夜にピッタリだねぇ」 「黙って聞いてろよ……まずあるところに若いカップルがいたんだ。高校の時から付き合って、今は同棲までしてる。たまに喧嘩もするけど、けっこう仲良くやってたと思う」 「うんうん。付き合ってる時が一番楽しいって言うしね」 「ああ、それである日さ、彼氏の方がお金溜めて旅行に行く約束するんだよ。そこでいい雰囲気にしてサプライズで結婚しようって言うつもりだったんだ。指輪まで買ってたんだけど――」 「あはは! 何それ! すっごいロマンチストだね」 「……やめる」 「いやいや、ごめんごめん。ほら、気にせず続けて」 「……でもさ、旅行の前日、彼女の方が事故にあって死んじゃったんだよ」 「うわーきっつ。けどその話、実話の態なのに安っぽすぎない? もうちょっとリアリティ出さないと最近の目の肥えた読者はシラけちゃうよ」 「うるせぇな……実話なんだからしょうがねぇだろ……そんで男の方はもう大変でさ。毎日泣いて喚いて暴れまくったんだ。もう死んでやるってぐらいにさ。実際自殺の方法とかいろいろ調べたんだぜ」 「へぇーーーーーーーーーーなるほどなるほど。ふふ、loveだねぇ、愛なんだねぇ」 「だから茶化すなよ……」 「あー、ごめんってば。拗ねないでよ。ほら、早く続き続き」 「ったく……でもさ、やっぱり一人じゃ無理だったんだ。根性なしだよ、どうしようもない。もう生きる意味がないのもわかってる。もうこの世に彼女はいないんだってのもわかってる。そんで死体も燃やして骨にする。まあ当然なんだけど。全部わかってんだよ。でもいやだったんだ。燃やしたらさ、人懐っこい顔も、柔らかい髪も、やせっぽちの身体もほんとのほんとに消えてなくっちまう。悪いことだってわかってたけど……男はさ、彼女の死体を盗んじゃうんだよ」 「うわぁ……マジ? それって何? 純愛? かなりイッちゃてるね」 「イッちゃってるって……まあそうかもしれないけど……それで彼女の死体担いでさ、行く予定だった旅行先で静かなところ探して二人で並んで死ぬんだってよ……」
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