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そのモルモットには、どうしても叶えたい夢がありました。飼い主の茉菜ちゃんとの約束を果たす為に。
だからひたすら努力し続けました。
4歳の茉菜ちゃんは、カピバラさんが大好きでした。だから、大きくなったらカピバラさんを飼う事が夢でした。
茉菜ちゃんが小学校に入学した時、お祝いに小動物が買って貰える事になりました。茉菜ちゃんは本当はカピバラさんが欲しかったのです。ですが高いしとても大きくなるし、餌代も大変だから大きくなって働くようになったら自分で買いなさい、とお父さんお母さんに諭されました。
「カピバラさんじゃないけども、同じ天竺鼠科という種類のカピバラさんの仲間だよ」
お父さんがそう言って茉菜に指を指して見せました。その指先が示すのは、モルモットでした。
「うわぁ、可愛い。ミニチュアカピバラさんだ」
茉菜ちゃんは沢山いるモルモットの中でも、薄茶色の子が一目で気に入りました。四カ月の男の子です。種類はイングリッシュ・モルモット。短毛種で一番メジャーなタイプだそうです。
モルモットの男の子は「メープル」と名付けられました。毛の色がメープル・シロップに似ていたからです。メープルはこっくりとした真っ黒のお目めは大きくて真ん丸で、桜色のお鼻は小さな逆三角形でとっても可愛らしい子でした。
『可愛い女の子だな。茉菜って言うんだ……』
メープルもまた、一目で茉菜ちゃんの事が気に入りました。
一人と一匹はこうして出会いを果たしました。
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