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「彼と初めてキスしたのは私よ! それに計画を立てたのは単に『表』に出たいからじゃない。彼と一緒にずっと死ぬまでいたいと願ったからよ。恵まれたあなたにこの私の気持ちがわかるかしら、あなたに触れる彼、彼とあなたの、わたしでなくあなたとの将来について楽しげに語る彼を一番近くで触れることもできずにいた私の気持ちを」
姉は私に嫉妬し憤っていたがそれとは裏腹に私は冷静だ。
5年前私は中三、彼と初めて私、いや姉がキスをしたのも中三、姉はこの計画をあの時から……。私は悟った。もう私が「表」に出てくることが無いこと、彼を最も愛しているのが私でなく彼女であることを。
私は残る意識を振り絞り彼のもとへ向かった、これが「表」での最後になるのだろう。
「……っかりしろ!」
彼の慌てた顔が見えた。優しい柔らかな顔だ。この顔を見られるのもこれが最後だと思うとどうしても涙が出る。これから一緒にご飯を食べ
、一緒に色んな所に行き、一緒に歳を取り、いつか子供ができたら一緒に遊園地にいく……当然そうなるのだと思っていた。もうそれは「夢」でしか見ることはできない。私は今までの全てを込め言った。
「ありがとう」
彼の顔が緩む。
「よかった、泣いてるけど大丈夫? 痛むの?」
優しい言葉が痛い。彼は私の『ありがとう』が介抱のお礼だと思ったのだろうか、それでも構わない。
「最後にキスをしてくれない?」
私は流れる涙を拭く間も惜しみ、脈絡なしに言う。
「最後なんて……これから何度もするさ」
彼はあまり「最後」に拘らなかった。でも私は彼を信じる。彼を最も愛しているのは悔しいが姉かもしれない、けれど彼が愛しているのは私だ。だからいつかきっと……。
「いつまでも『永遠に』愛してるから……私」
忘れてほしくない。それを口に出さずして、塞がれた。
彼の優しい笑顔を初めて見た時、彼は「ずっと待つよ」と言ってくれた。デートでも待つのはいつも彼だった。たまには私が待とう。彼が「眠り」から起こしてくれるまでずっと。
その可能性がほとんど無いことを私は十分理解していた、けれど0でないのなら……。
今はただ、彼のこの笑顔を歪ませずに「眠れ」ることが幸せだった。
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