エピローグ

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 宵の口から逃げてきた夕日が、明かりを点けていない部屋に差し込む、夕食には早いが肉うどんを作った。棚から椀を取り出し盛る。 「ネギはいれないでよ」 彼がおどけて言う。 「大学生にもなってそんなこと言わない」 気にせずに加える。椀を両手に持ち、テーブルへと運ぶと彼はテレビを見ていた。  ネギを見つけた彼は分かりやすく顔をしかめるが、私は文句を言われる前に 「頂きます」 と演技調に言う。幸せだ、素直にそう思った。  会話を挟み、テレビを眺めながらうどんを啜る。見ていたはずの番組が終わり、いつの間にかニュースが流れてきていた。変えようか、箸を椀の上に置きリモコンに手を伸ばす。馴染みのある名が聞こえた、手は行き場を失いその場に浮く。 「えっ、は?」 驚きのせいか、鼻息が早く浅くなっていく。  しかし、驚きだけでないことを私は知っている。知っているが、認めたくなかった。私の奥底に「眠る」それを。
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