死に抱かれて

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 交際をして一年半程はうまくいっていた。お互い初めての恋人で何も分からず、気の使い合いになる場面もあったがそれはそれで初々しくよかった。  しかし三年生になり彼が部活を引退すると冷たくなった。実際には彼が塾に通い出したことで一緒にいる時間が減り、気まずくなっただけなのだが、本気で悩んだ。私はこれほど好きなのになんで……。なかなか眠れない夜を数日過ごした頃、私は「眠り」に就いた。  次に目を覚ましたのは3日後の朝だった。私は特に驚きはしなかった、むしろ全身の疲れが取れ心は穏やかだ。支度をし部屋を出る。ここで気付いた、何かが変だ、私は手に提げている物を見る。彼と同じ塾のバッグだ。 「どうして」 そう呟きつつ私は分かっていた。彼と話し合い仲直りをする私。親に塾に通いたいと言う私。彼と塾の帰りにキスをする私。3日間の出来事全て知っている。しかしそれは知識にあるだけで、私の意識はそこにない。「夢」だ。  だがやはり驚きはない、元々あったものを思い出しただけなのだから当然だ。ペンをどこに置いたか、テーブルの上。これと変わりはない。だが、気になることはあった。ファーストキスを「夢」に奪われた気がしてならないのだ。  3つ目は私が彼と同じ地元の進学校へ入り、2年が経つ頃だ。この頃には「夢」についてかなり分かってきていた。友達に話すのは勿論、両親にも彼にも秘密にしていたそれについて私の数年に渡る経験の結果言えることはストレスが関係しているということだ。これまで「夢」に入る時私は強いストレスを抱えていた。中学に入るまでなかったのは悩んでストレスを感じるということがなかったからだろう。「夢」の長さについても分かってきていた、ストレスの強さに比例するらしい。  ここまで分かっていたので「夢」を抑えるのには大して苦労していなかった。しかし、私の理性が働かない時間が僅かにあった。一般に言う夢を見ている時だ。
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