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露出の多い四肢に日差しが刺さる。麦わら帽のつばを見上げると溢れる光が星のようだ。懐かしい、いつ見た景色だろう。
「リカ……」
唐突に聞こえてきた声。病弱で透き通るように色白の、母の。か弱くやっと絞り出したような声だった。屈んだ母の肩に父が手を乗せている。
「ごめん」
今にも事切れそうに父が言う。
「違うわ……」
母は胸の前で丁寧に合わせていた手を顔に当てる。
母は泣いているのだろうか、なぜ父は謝ったのか、なぜ……私はそれ以上疑問しなかった。私自身が泣いていたのだ。久しく忘れていた感覚に襲われる。「夢」が来た。
目覚めたのは二週間後の朝だった。これにはさすがに動揺した。今までの「夢」の中で一番長い。例によって記憶はあるので遡る。
「ああ……」
ややあり、思い出した。多分、幼い頃の記憶だろう、だが腑に落ちないことがある。私はなぜ二週間も「眠る」程のストレスを感じたのだろうか。少し考えただけでは思い当たる事はない。記憶に準じているとはいえ、曖昧なものなのだから無理もない。
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