死に抱かれて

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 そして時は流れ大学生になった今、私は新たなそして衝撃的な例外に直面している。なぜこんなことに……。  私は高校を出た後上京し世間では有名大学と呼ばれる所に入った。高校では三年まで全く勉強をしていなかったが、彼と同じバドミントン部を引退してからは鬼のように勉強した。320人中下から2番だった成績は文系4位を取るまでになり、第一志望の国立大学にもA判定を出した。理系の彼とは違う大学だったが週に一度は会える距離で心配はなかった。  だが皮肉なことに私は彼と同じ大学に入った。二人とも第一志望に落ち、滑り止めの私立大学に入学したのだ。同じ大学へ行けたのは勿論嬉しかった。それでも第一志望に落ちたのは「夢」こそ見ないまでもショックだった。私は暫く苦悩した。  報われない努力はないと私は思っている。綺麗事を言いたいのではない、報われないのは努力をしていないだけだと思っているのだ。だから私は必要な所では報われるだけの努力をしてきたし実際、報われてきた。まさかこんな形で首を絞めることになろうとは。   しかしそうして悩んでいたのも最初のうちだけだった。大学が始まると驚きの連続だった。高校までと違い少なく出席もほとんど取らない授業に自由なサークル活動。加えてバイトを始めたことで金銭的余裕もできた。私は早くからキャンパスライフを謳歌していたと言えるだろう。  彼との仲も順調だった。大学に入ってからは自然と肉体関係も持つようになり、更に互いの愛が深まるのを実感した。正式なプロポーズこそまだだったが彼から大学を卒業したら結婚したいという想いも伝えられていた。  私もいつからか彼と結ばれいずれ子供ができ、幸せに暮らすのだろうと漠然と考えるようになっていた。いや、そうなることが既に約束されているようにさえ感じていた。だから私は、子には何と名前を付けようか、一人目は女の子だといいな、私と彼どちらに似るだろう、誕生日には何を買おうか、と妄想を膨らませるのに何の恥じらいもなかった。
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