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寛直をその子が抱っこしていた。孫を抱く彼女の表情はとても嬉しそうだ。
スタッフは段々と場に馴染み、飲んで騒いでいる。
茅那子は授乳中でもあるので、お酒は飲まなかった。
寛直が眠そうになってきたので、文江がベッドルームを貸してくれた。
ベッドルームには鏡台があり、その上にパールのネックレスがこぼれ落ちそうになっているクリスタルの小物入れが置いてある。香水の瓶や化粧道具入れ、イヤリングを沢山入れた受け皿。自由で女性らしい豊かな風合いの調度品に茅那子は目を見張った。
息子を寝かせ、テーブルに戻ると、一郎が文江の隣に座って、二人は親密そうに話している。文江は聞上手で、人をくつろがせる名人だった。
「一郎さんも文江さんと話して、ご機嫌なようで、良かったわ。オーナーと社長、これからタッグを組んでやっていかなければならないから……。そうでないと、私が早く退陣できないわ」
その子が嫉妬の色を浮かべることなく、二人の仲のいい様子を心から喜んでいることに、茅那子は違和感を覚えた。
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