第8章 引継

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 その子が文江に経営学を教え終えて会社を去ってから、1週間が経った。また文江が社長に戻り、茅那子も産休を終えて、寛直を保育園に預けて、職場復帰している。  その子と話したいことが沢山あったが、忙殺されてなかなかその機会が持てなかった。 「時々、具合が悪そうな様子だったの。『真下社長、大丈夫ですか?』って聞いても、『ええ、心配させてごめんね。何でもないのよ』って答えるだけで……」  文江の話を聞いて、茅那子は胸が痛くなった。でもたとえ、自分がその子の体調を心配したとしても、気丈な性格のその子はきっと同じように答えただろう。  職場だからこそ、茅那子は込み上げてくる不安を顔に出さないようにした。  ……真下その子さんは大丈夫なんだろうか?
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