第9章 手紙

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 一郎は『再々婚だから』と照れ、文江は『この歳だから』と言い、結婚式はレストランを貸し切っての、ごく親しいものたちだけのものになった。  ドアが開いて、文江が姿を現した。彼女が身につけているのはAラインのドレープの長いウェディングドレスだった。  細くて上品な顔立ち、目は澄んでいて、柔らかそうな肌は透けるように白い。頬はかすかに薔薇色に染まり、女性の茅那子でも文江の艶やかな姿にぼうっとしてしまった。  一郎はダンディーなタキシード姿で、その目は文江を優しく見つめている。  結婚式が無事に終わると、会場は温かい祝福の拍手と歓声に包まれた。  茅那子も惜しみない拍手を送っていた。
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