第9章 手紙

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 死に行く人には死に行く人の人生があり、これから生きていく人には生きていく人の人生があります。そのことも気づかずに、私は一郎さんを自分のものだと思っていたくありませんでした。  私は今、緩和ケアをしてくれる施設に入っています。気づいた時には不治の病にかかり、何もかもが手遅れでした。  病気と闘うよりは、病気と共存する道を選びました。モルヒネというお薬は、命を縮めますが、最後まで人間らしく生きたいと思ったからです。  私は全てを文江さんに託しました。  だから文江さんと一郎さんが幸せに暮らして行くことが、私の一番の願いです。
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