1035人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
帰途につきながら、茅那子は両親に愛されることのなかった過去を思い出す。
過去の傷や苦痛からできた欠乏感や恐れからくる虚しさや渇きの感情が湧き上がってきた。
もしかしたら母がそれを埋めてくれるかも……と自分の外側に救済や助けを求めていた。
しかし、相手や物事を自分の思うようにコントロールすることなどできはしないのだ。
母の愛さえもらえれば、自分も心が穏やかになると考えていた。そしてそれを得ようと今までは必死になっていた。
かなり依存的だったと思う。それで、さらに新たな幻滅感と傷を作っていった。
母に愛を乞うのをやめることを決心すれば、人と物との真実の繋がりを持つことができるような気が今はしている。
執着を手放せば、両手が空く。その両手に何を掴むのかは、これから自由なのだ。
最初のコメントを投稿しよう!