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しかし、次第に目の奥がズキズキし始め、痛みが増してきた。
茅那子は自分に裁縫の才能がないのを十分に自覚した。
なかなか針穴に糸は通らないし、時々、指に針を刺してしまい、
「痛いっ」
と声を上げる。
ミシンを使うことにしたけれども、たとえ甘い言葉でおだてて、なだめすかしても、ミシンは縫っている途中で必ず動かなくなってしまう。
これは機械のせいというよりも、多分に自分のせいだ。
「はあっ」
深いため息をつき、作業を一時中断して、茅那子はキッチンに向かい、コーヒーを淹れた。
火傷しそうな熱いブラックコーヒーをゆっくりと飲み込む。
湯気のもうもうと立っている濃いコーヒーは好みに合っていた。
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