第10章 再会

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 ホスピスの談話室に、車椅子に乗った男女が現れた。  男性はタキシード姿。女性は裾に銀色のスパンコールのついた白いドレスを着ている。  施設の職員や入所している方々が大きな拍手で迎え入れる。 「茅那子さん、ドレスをありがとう」 照れたような笑いを浮かべているのは、真下その子だ。 「いえいえ、私、不器用ですみません。どうしてもお義毋さんにウェディングドレスを着てほしいと思いました」 「ありがとう。着るのは、本当に初めて。嬉しいわ」 その子は目尻に皺を浮かべた。  タキシードを着た男性は、その子のボーイフレンドの、70代のダンディな紳士、木村さんだ。 「いやあ、私もタキシードを着るのは初めてでね。仕事、仕事で結婚する暇もなかったからね」  木村さんの言葉に談話室は笑いに包まれた。
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