第1章 当惑

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「私が……、妊娠?」 その言葉が何度も茅那子の頭の中で繰り返される。  病院のドアを開けて外に出ると、強い風が真っ白なブラウスに吹き付けて、黒髪をかき乱した。 「スーツを持ってくれば、良かった」 数時間前はポカポカして暖かかったのに、春の気候は気まぐれだ。足が震えて、なかなか一歩が踏み出せない。 「こんなことって、ある?」 茅那子はうなじを揉みながら、しばらく思いを巡らせた。ここ数日間のことをフラッシュバックさせるには十分な時間があった。 「妊娠9週目になるとしたら、身ごもったのはちょうどあの飲み会の時だわ」 病院からわずか15分位のところにある会社に向かいながら、茅那子はそっと呟いた。
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