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そのうち、バーに一人で通うようになった。カクテルの色は甘くて美しく、茅那子の心を和ませた。しかしお酒を飲んだ後は、ぽっかりと穴が開いたように何も記憶が残っていなかった。その時は自分の中にどんな官能が潜んでいようと、それ自体を押し込めておこうとは考えなかった。むしろ自分と相性の合う相手を探求してみたい思いに駆られていたのだ。
見知らぬ男性が隣に寝ているホテルで目覚めたこともある。
「これでは、私はダメになる」
やっと気づいて新しい人生の軌道に乗せるために、茅那子は女性ホルモンを二の次にしようと決心した。
茶髪の髪を黒に染め直し、メガネをかけた。昔のような自分本位で無責任な女とは決別したつもりになっていた。
せっかく入社できた会社が潰れることになってしまい、ヤケになってあの恐ろしい液体を口にしてしまったのだろうか。
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