第1章 当惑

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 ほどなく茅那子は強風の中を足早に歩いて、ガラス張りの5階建てのビルの中に入っていった。  田代淳二、金子道彦、後藤喜一、林栄一の顔が脳裏をかすめる。  茅那子の勤める会社はビルの三階にある。フロアの窓からは川が見渡せた。波が岩に激しく打ち付けて、荒涼な風情を見せている。  茅那子の心の中もその風情に似ていた。心臓が激しく打ち始めたが、平静を装い、自分の席に着く。茅那子はきつく目を閉じた。  再び、職場の男性たちの顔が次々と浮かんでくる。
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