第1章 当惑

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 田代淳二、金子道彦、後藤喜一、林栄一……。  結論は一つだ。男性の知り合いといえば、この会社にしかいない。  そして事が起きたとしたら、それはこの会社の社長である森文江の家で催された飲み会でしかない。あの日、文江は自宅でスタッフをもてなしてくれた。 「自分の会社を持つということは他の人と同じようにできるけれども、他の人と同じように運営していたのでは展開は望めない。やがて淘汰されてしまう。気づくのが遅かったわ。でもあなたたちは最後までよくやってくれた。ありがとう」 スタッフへの慰労を兼ねた飲み会だった。  文江の家で食事をして、茅那子はワイングラスを手に押し付けられ、少なくとも一杯は飲んだ。慰労会ということで、気が緩んでいたのかもしれない。それから、二杯、三杯と口にした。そして……?  その後の肝心な部分を思い出そうとすると、頭痛がした。  飲み会の翌日は自宅の寝床で目が覚めた。……勿論、一人で。  だから妊娠するわけがない。……でも妊娠しているのだ。
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