第二夜 「血に飢えた街」

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「…中身は全て…吸い出されてる、全く…なんとも…恐ろしい魔病か」 そう魔女は…遺体を地面に置き戻すと、また聖堂の方へと向かった。 この魔女の名前は“アズル”と言った…、魔導協会の中でも、主に“治療不可能”とされた魔病の“殲滅・駆逐”を担当する。 攻撃魔法を得意とした、魔導師であった。 アズルは今回…この聖堂の街と呼ばれた街に蔓延した“枯血病”と呼ばれた魔病の、感染者…それの殲滅へやって来たのであった。 さて…この“枯血病”とは、如何なる病か。 それは実に奇妙で恐ろしい病であった。 魔病には、幾つかの種類に分類して呼ばれることがあり。 例えば苔化病であれば“植物系”と言うような具合であるが、この枯血病とは…“蟲系”と呼ばれる種類の魔病であった。 感染者はこの枯血病に感染すると、あの先程アズルが仕留めた相手の様に口から昆虫の“蚊”のような嘴が喉の奥から現れて、それを用いてひたすら他者の血や内臓を吸い尽くすという物だった。 それを腹部に備蓄して、備蓄された腹部は異様に肥大化し、その様がまるで昆虫の蚊であるような様子や、ひたすら血を貪る様から“枯血病”と呼ばれるようになった。 この病は感染者を治療するのは不可能とされており、更には他者を無差別に吸血…殺害する病の為に、非常に危険な魔病として、今回はそんな魔病殲滅・駆逐を得意とするアズルが馳せ参じたと言うことであった。
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