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「……仲間、?」
髪を拭う手が止まり、詩の視線が戸惑うように揺れる。
『香乃くんのような異性愛者から見たら、僕たちは同じ異端者だ。つまり、僕たちにしか分からない傷や痛みがある。だから君は、君の都合で僕を利用すればいい』
「……いや。利用とか、そんないきなり……」
『痛みを和らげるための薬だと思えばいい。大丈夫、僕も僕のために君を利用するつもりだから』
「……セフレ以上、友達未満。って、とこですか」
簡潔にまとめた詩に、そうだねと樹が答える。
『悪い話ではないと思うけど』
──確かに、悪い話ではない……けど。
詩はたっぷり1分間口を閉ざし、ゆっくりと腕を上げた。水気を吸ったタオルをローテーブルに乗せ、スピーカーを切った携帯を耳に当てる。
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